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ほのぼのとベッドの上でくつろいで居るときだった。
ふいに、コンコンとドアをノックする音が聞こえ、クリュウの背筋は冷たくなった。


「クリュウ様」

この子を隠さないと!!

この声はカーサだ。
見つかったらきっとこの子は殺されてしまう。


隠そうと思っても、この部屋にあるのはベッドだけ。
こんなことなら、ワガママの1つや2つ言っておけば良かった。
後悔しても、もう遅い。

「クリュウ様?開けますよ?」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

そのときふいに風が入ってきた。
窓は閉めてたはずなのに・・・。

『祈り、歌え。その身に神を降臨させよ。我は汝を使役するもの』

どこからか、声が聞こえた。
生まれて初めて聞く少年の声。

「だれ・・・?っきゃ!」

「クリュウ様?!」

クリュウの悲鳴が聞こえたのか、どこか焦った様子でバンッと大きな音を立ててカーサが部屋に入ってくる。

「ひっ」

カーサは部屋の中心で座り込んでいるクリュウの隣に居るモノを見て引きつった声を上げた。
クリュウの隣には、黒竜と見知らぬ少年が1人立っていたのだ。

「え、衛兵!クリュウ様が・・・クリュウ様が!!早く来てー!!」

「ちっ」

クリュウは自分の目の前に立っている少年を見上げた。

「あなた・・・」

黒い髪に、紅い瞳。
腕に彫られている刺青。
そしてなにより、さっきの真言。

「竜族・・・?」

「行くぞ、バイス!!」

「あ、待って!」

クリュウは開け放たれた窓から飛び出そうとした少年の腕を掴んだ。
すると、クリュウが少年に触れた部分、ちょうど何かの刺青が彫ってある部分から、赤い光が漏れた。

「なっ」

少年も驚いただろうが、もっと驚いたのはクリュウだ。
頭に、なにか・・・。
それは膨大な知識。
竜族にまつわる言伝え、歴史、そして・・・。

『あなたは、だあれ?』

頭の中で、誰かの声が響いた。

『俺は、カミオ。この地に住む、竜族の1人だ。』

竜族・・・?

『この剣についてる宝玉・・・』

『すごいな。あんた、竜が操れるのかい?』

『おねぇちゃん。お歌唄って?』

人の声・・・。
たくさんの人の声。

「っ・・・」

なんでだろう?
声を聞いてると、胸が熱くなる。
なんで、こんなに懐かしい気持ちになるの・・・?

「お、おい」

少年が困った様に、クリュウに話しかける。

「あなたは、だあれ?」

クリュウは知らないうちに、頭の中に一番最初に響いてきた女の人と同じ質問を目の前の少年にしていた。

「俺は、カイだ。さっきあんたが言った通り、竜族だ」

「私は・・・」

「クリュウ様!!」

衛兵を引き連れたカーサが戻ってきた。

「悪りい。今、取り込み中なんでまた後でな」

カイはクリュウの腕を引っ張りバイスの背に乗せた。

「えっ?」

風が部屋の中に巻き起こる。
黒竜が床を蹴り、宙に浮かぶ。

「壊せ、バイス!!」

クリュウはカイに頭を押さえつけられた。
バイスが口を開け、光りを窓に向けて撃った。
すさまじい爆音と爆風がクリュウの部屋を駆け巡る。

「舌を噛むなよ」

カイはクリュウにそう告げると、バイスに合図を送った。
バイスは鳴くと暗闇の中に身を躍らせた。
力強く羽ばたくバイスの羽に合わせて、バイスの体全体が揺れる。

なんでだろう・・・。
私は、この感覚を知ってる。
この、宙に浮かぶ不思議な感覚を・・・。

「お、おい!」

そこまで考えると、クリュウの意識はゆっくりと闇に落ちていった。

「あぶねっ」

意識を失うと同時にぐらついてバイスから落ちかけたクリュウをカイは落ちる寸前で支えて自分の方に持たれかけさせた。

「こいつ・・・」

カイは自分の腕の中で眠っている少女を見ると、ため息をひとつついて、星がきれいに輝いている空を見上げた。
なんだか厄介なことになってきたな・・・。



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