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「お前は一体どこから来たの・・・?」
聞いても無駄だろうなと感じながらも、クリュウは聞かずにはいれなかった。
あれからこの子竜を自室に連れ帰るまでの時間はクリュウの人生の中で一番大変だった時間だろう。
なにせこの子竜、目を離すとすぐにどこか別のところに行こうとしてしまうのだ。
それに、人が居るところで鳴いたりもした。
見つけたのが私だったから良かったようなものの・・・。
もともと竜とは人から恐れられる存在だ。
一部の人々を除き、竜を見たものは恐怖の悲鳴を上げ逃げ惑う。
それが子竜であったとしても、だ。
一部の人々、伝説によれば唯一竜を操ることが出来るとされる竜の一族以外は。
「キュゥ?」
「お前は不思議な子だね」
クリュウはそっと子竜の頭をなでる。
人から恐れられる存在ゆえに、竜は滅多に人前に姿を現さない。
現すことは自分の死につながると理解しているからだ。
世界には、竜を討つことで己の名をあげたいと望むものが星の数ほど居る。
「名前、なんていうの・・・?」
あごの下をコチョコチョとくすぐると、猫と同じような反応を返してくる。
意外な反応だなぁ。
普通の人間なら感じる竜に対しての恐れは感じなかった。
むしろ、この子竜にどこか懐かしさを感じていた。
この気持ちは何だろう?
胸に出来た暖かな感情に、クリュウは戸惑った。
戸惑いつつも、この時間はクリュウにとって初めて体験する穏やかな一時だった。
◆
カイの顔からは、はっきりと焦りの感情が見て取れた。
日が昇る前から日が完全に落ちきった今まで自分の連れを探していたのだ。
「バイス!!お〜いっ!」
時間がたてばたつほど焦りは強くなっていく。
バイスは子竜だ。
いつ人間に見つかって殺されるか分からない。
幸いなことに、バイスを探しに行った村で子竜が見つかったという話は聞いては居ない。
ということは、少なくともまだ見つかっては居ないということだ。
カイは最初にはぐれた森の中に戻って着ていた。
もしかしたら、ここにいるかもしれないという期待を胸に。
が、この森には気配はおろか、いたという痕跡すらない。
普通竜がいた場所には独特の気の流れが出来るはずなのに・・・。
さては、あのバカ俺が寝入ると同時にどっか行きやがったな!?
それに気づくことが出来なかった自分に、カイは少し嫌気が差した。
後探していない場所はただひとつ。
レカナンで最も警戒が厳重と言われているパーツェン教会のみ。
噂によると、なにか教会にとって重要なものが置かれているとか。
なんでよりによってあの教会なんだよ・・・。
今は居ないバイスに怒りを感じずには居られない。
もしも警備のものに見つかったら自分の命はないだろう。
数年前教会の手のものとやりあったときに出来た肩の傷跡を軽く押さえるとカイは決心した。
あそこには、俺の命よりも大事なものが居るかもしれない。
その可能性を放っておくわけにはいかなかった。
カイは自分の腰にある短剣を確認した。
行くぞ。
カイの姿は森の闇に溶けて消えた。
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