<3>



暗闇の中、聞こえるのは自分の荒い息遣いのみ。
どうしてこんなことになったんだろう?
痛みを訴えてくる右腕を押さえつけながら、必死で走った。

暗い森、赤く染まった自分の短剣。
風と共に聞こえてくる仲間の声。

あぁ、やっと森を抜けた―。

「!?」

突如地面が盛り上がり、人の形を作る。

嘘だ・・・。

目の前に居るのは両親。
うつろな目をしながら、飛び出た内臓を引きずりながら地面を這って来る。

「ぁ・・・。!!」

いきなり後ろから足首をつかまれた。

どうして・・・?

足首をつかみ、こちらを見上げてくるどんよりと濁った親友の目が、そう訴えかけてくる。
次々と地面が盛り上がり、見知った顔が出てくる。

「あ、うぁ・・・うわあぁあああああああ!!!!」




カイは自分の叫び声で目が覚めた。
それはもう日常になっていた。
悪夢を見終わった後、激しい自己嫌悪に襲われることも・・・。

「また・・・」

みんな死んだ。
俺が・・・殺した。

カイは自分の震える手をしばらく見た後、手から血が出るほど堅く握った。
血まみれの自分の手を、これ以上見たくはなかった。

「くそっ・・・」

夢の中の彼らはいつもこう訴えて来る。

―お前はいったいいつ死ぬんだ?―

忘れられない空ろな目。
忘れることの出来ない肉を断つ感触。
どれもまだ鮮明に自分の記憶の中に残っている。



悪夢のことを忘れようと辺りを見回して、重要なことに気づく。
連れが居ない。


朝日が昇っているとはいえ薄暗い森の中。
夜だったら隣の顔も見えないぐらい暗いだろう。

まさか・・・。

カイは最悪の事態を想像し、顔を蒼くした。
必死に別の可能性を探そうとするが、最初に想像してしまったことがどうしても頭から離れない。

まさかあいつ、迷った挙句どっか人間のいるところに迷い込んだんじゃ・・・。
だとしたら、今日は最悪の1日になりそうだ。

自分の運のなさに嫌気が差しながら、カイはゆっくり立ち上がった。

「どこから探そうか・・・」

しばらく悩んだ後、一番居てほしくないところは最後に探すことにして、カイはとりあえず近くにある村に向かった。


←前 次→