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「素敵でした。クリュウ様」
ペコリと頭を下げてくるのは最高位神官。
その神官を冷たく一瞥すると
「・・・ありがとうございます」
クリュウは嫌味なほどに深く、丁寧なお辞儀を返した。
「それでは、失礼します」
何かを言おうと口を開きかけた神官をさえぎり、クリュウはさっさとその場を離れることを選んだ。
後ろから聞こえてくる舌打ちの音。
その音も完璧に無視すると、クリュウは神殿の中庭に出た。
まだ太陽は低く、薄着のクリュウには肌寒い気温だ。
「はぁ・・・」
思わず漏れたため息は、誰にも聞かれることがなく朝の冷たい空気に溶けて消えた。
中庭に少し入ったところにあるベンチに座るとクリュウは上を見上げた。
まだ、薄暗い空を鳥が群れをなして飛んでいく。
いいなぁ。
生まれてすぐに託宣を受け、神殿に閉じ込められたクリュウはまだ一度も外に出たことが無いし、
神殿の人や、貴族といった特定の人々以外には会ったこともない。
そんなクリュウは、自由に空を飛びまわっている鳥を憧れずにはいられなかった。
今日何度目かも分からないため息を吐くと、クリュウはパタリとベンチに横になった。
教育係の侍女カーサが見たりしたら顔を真っ赤にして怒るだろう。
しばらくそうして目を閉じていたクリュウだったが、微かな物音を聞き起き上がった。
その音は中庭の奥、木が生い茂った辺りから聞こえてくる。
なにか、いる。
もしかしたら、それが自分に危害を加えるかもしれないと一瞬考えたクリュウだったが、
何が居るのか見てみたいという好奇心に負けた。
そうなったらそうなったで別にいいかな、と考え直すとゆっくりと音のする茂みに近づいていった。
ガサッ!!
「!?」
茂みから黒い物体がクリュウめがけて飛び出してきた。
それを受け止めることが出来ずに、クリュウは後ろに倒れこむ。
「キュィ」
大きくてつぶらな瞳とはこういう目のことをいうんだろうな・・・。
自分の上に乗っかっている子竜を見つめながら、クリュウはぼんやりとそんなことを考えていた。
ずっとこの状態で居る訳にもいかないので、クリュウはそっと子竜をどかすと起き上がった。
服が泥のせいで汚れてしまっている。
カーサにまた叱られる。
「キュゥー」
そう鳴くと、子竜が再びクリュウに突進してくる。
「えっ!?ちょ・・・」
今度は受け止めることが出来た。
いったいこの竜は何なんだろう。
どうしてこんなところに居るんだろう・・・?
汚れてしまった自分の服と、腕の中で可愛らしく首をかしげている子竜を見比べると、クリュウはどうしたものかと空を見上げた。
空はもう明るくなっていた。
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