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盗賊達のアジトに招かれたカイは食堂で少し遅めの朝食をゴツイ盗賊たちに囲まれてとっていた。

「久しぶりじゃねぇか、カイ。お前少しもでかくならねぇな」

「・・・うわっと。危ね」

飲み物を飲もうとしている時に後ろから頭を叩かれたカイは危うく口に含んだ飲み物を噴出しそうになりながらも自分を叩いた相手を睨み付けた。
どこか偉そうに立っている、たった今カイの頭を叩いた張本人は豪快に笑うと、断りもせずにカイの隣に座った。

「そんな固い事言うなよ、昔はよくやってただろうがっ!!」

バンッと勢いよく背中を叩かれたカイは危うくテーブルに突っ込みそうになった。

「だ・か・ら・・・止めろって言ってんだろっ!!」

カイは勝手に飲み物を呑もうとしている男のコップの底を勢いよく叩いた。
堅い物と硬い物がぶつかり合う音がした後に、悶絶している男が居た。

「ざまあみろ。自業自得だ、ペオル」

「は・・・鼻の穴・・・穴にっ!!!」

「炭酸の恐怖をたっぷり味わえよ」

悶絶しているペオルを放置し、再びカイは食事を始めた。
そんなカイに、どこか敵意を燃やしている男が一人、自分の食事もそこそこに立ち上がった。

「てめぇ、兄貴に何しやがるっ!!」

いきなり殴りかかってきたマッシュをひらりとかわしたカイは、皿に盛られているスパゲッティを食べつつまだ攻撃しようとしてくるマッシュの顎に蹴りを入れる。
周りのテーブルやイスを巻きこみながら倒れたマッシュを見下ろしつつ、カイは空になった皿をテーブルの上に置いた。
服の上着を脱ぎ捨て、動きやすい服装になったカイを見た食堂のおばちゃんは慌てて叫んだ。

「こら、カイっ!!ここで喧嘩はご法度だよっ」

「悪い悪い。でも、俺は悪くなんか・・・」

食堂のおばちゃんに謝りつつ、マッシュのパンチをかわし、そのままマッシュの腕を掴み、投げ飛ばす。
食器の割れる音と、周りの盗賊がもっとやれと囃し立てる声が食堂中に響いた。

「お前らっ!!」

やっと立ち直ったペオルの静止を無視して、マッシュは再びカイに攻撃を仕掛けようとした。

「いい加減にしろっ!!!」

食堂中に、低く威圧感溢れる男の声が響いた。
カイが食堂の出入り口に目をやると、どこか神経質そうな大柄の男が額に青筋を立てて立っていた。

「・・・よぉ、シェロン。元気か?」

「・・・副頭領」

それまで囃し立てていた盗賊達の声も止み、マッシュが蒼い顔をして立ちすくんだ。

「やはりお前か。・・・頭領がお呼びだ。ついて来い」

シェロンはまだ立ちすくんでいるマッシュを睨み付けると、近くに居た盗賊に片付けを命じ、食堂から去った。

「続きやるならまた今度な」

カイはマッシュの肩を2,3度ポンポンと叩くと、ペオルに近付いた。

「じゃ、案内よろしく」













「よく寝れたか?」

「ヴェシム、あんたがまだ生きてたなんて驚いたぜ」

動物の毛皮が敷き詰められた椅子に座っているヴェシムに無造作に近付きつつ、カイは毒づいた。
そんなカイを笑い飛ばしたヴェシムは自分の近くの椅子を指差しカイにそこに座るように指示を出した。

「言うようになったじゃねぇか、小童が。まぁ、お前にとっちゃ俺の方が子供って事になるのか?」

「・・・そんな事はない。それよりも、感謝してる。ありがとうな」

椅子に座って膝の上で手を組んだカイは深刻そうな顔で呟いた。

「いいって事よ。いまさら遠慮する仲でもない。そうだろ?」

笑って拳をつき出したヴェシムに自分の拳を重ねながら、カイも笑った。

「それよりも、あのお嬢さんは・・・」

「クリュウの事か・・・。やっぱり何かあんたの耳に入ってるんだろうな」

「当たり前だ。あの嬢ちゃん、今教会の奴らが血眼になって探してる子だろう。俺の所にも知らせが来た」

その言葉を聞き、カイは顔をしかめた。
ヴェシムは国と裏で取引をしている、いわば公認された盗賊だ。
だから、国もヴェシムに手を出すことはなかった。
だが、今は状況が変化した。

ここに居たら、ヴェシムに迷惑が・・・。

「おい、今俺に迷惑がかかるとか考えただろ?・・・・・・なんでかって?それぐらい分かるさ」

長い付き合いだからな、と呟くとヴェシムはおもむろに立ち上がり、部屋の隅にある棚の中から紙を2枚取り出してきた。
その紙を目の前の机にカイが見やすいように置いた。

「やっぱり上手くはいかないな」

机の上に置かれたのはクリュウとカイ2人の手遺書だった。
クリュウは怪我一つ負わせずに身柄を確保せよという内容。
カイは・・・。

「こんな状態のお前を外に放り出すわけにもいかない」

生死を問わず、身柄を押さえたものには賞金が・・・。

「さすがに、お姫様を攫ったのはやばかったみたいだな」

「どうするんだ?ただでさえ、お前は厄介な事を抱え込んでいるだろう」

「・・・いまさらクリュウを返すわけにもいかない。それに、アイツは教会には戻りたくないって言ったんだ」

カイは椅子から立ち上がった。

「ヴェシム、最後の頼みだ。クリュウが着れるような服をくれ」

「駄目だ」

ヴェシムはカイを睨みつけ、椅子に座るように指示を出した。

「お前、今どんなにヤバイ状態か分かってないだろう」

深く息を吐き出すと、ヴェシムは続けた。

「服はやる。だが、今は駄目だ。・・・教会の捜索隊にはこことは違う場所に竜が降りたという情報を流している。しばらく身を隠して状況をよく把握しろ」

「でもっ」

「いいから聞け。いいか、テューラ坊やも捜索に出た。せめて、坊やがこことは反対の国境側に行くまでは大人しくしろ」

テューラという名前にカイは固まった。
この国一番の剣豪と名高いテューラの名を知らぬものなどこの国には居ない。

「マジかよ」

そんな奴に見つかったら、とてもじゃないが隣国に逃げることなど不可能になる。

「うちは揉め事には慣れてる。遠慮せずにここに居ろ。なに、心配しなくても仲間を売るようなクズは居ないさ」

ヴェシムは椅子に座ったまま考え込んでしまったカイの肩を叩いた。

「お前には、借りがある。ここの奴等全員がな。・・・そろそろお嬢ちゃんの目が覚める頃だろう。行ってやれ」

「・・・・・・あぁ」

カイは短く答えると、ヴェシムの部屋を出た。
出る間際のヴェシムの力強い笑みに、カイは少し励まされたような気がした。



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