「おっ?」
驚いた。
ドア開けたら冷たい空気が流れ出てきたからまだ誰か居るのかなって思ってたら・・・。
窓際の席で気持ちよさそうに机に伏せて寝ている奴がいた。
幼馴染の朱美だ。
「もう7時過ぎたんだぞ?」
今日は見たいテレビがあるって朝からあんなに言ってたのに何してんだか。
もしかして・・・。
「待っててくれたとか?」
それだったらちょっとうれしいな。
こんなに気持ちよさげに寝られてたらあんま起こしたくないんだけどさすがにな。
こいつの親も心配するだろうし。
「おい、朱美?起きろって」
反応無し。
しょうがないな。
近寄って肩を叩こうと思って手を伸ばしかけて止めた。
肩がかすかに動いたからだ。
もしかして、もしかしなくともこれは寝たふりかよ。
「おい、朱美。いいかげん起きろって。バレてんだぞ?さっさと止めないと・・・。」
「止めないと、何?」
朱美が伏せていた机から顔を上げ、俺の顔を覗き込んできた。
「何するつもりだったの?」
「そんなの決まってる」
「へぇ・・・」
「お前が大っ嫌いなこちょこちょを・・・」
俺がそういった瞬間朱美の顔つきが変わった。
「うっわ、俊介さいってー」
「んだと?お前にそんなこと言われる筋合いはない」
ほら、と手を差し出す。
「帰るぞ?」
「うん」
朱美がうれしそうに笑った。
こうしてれば、大人しいのになぁ。
「俊介、大好きだよ」
「・・・はっ?なんだ、寝ぼけてるのか?」
「そう見える?」
そう言う朱美の顔は珍しく真剣だ。
「俊介は?」
「・・・別に」
つい顔をそらしてしまった。
朱美が俯くのがわかる。
「俺は・・・さ」
言葉に詰まる。
俺は、何を言おうとしているんだろう?
この告白は、いったい何に対する告白?
恋愛?それとも友情?
「俺は、朱美のこと、好きだよ」
「それは、友情?」
何言ってるのかわからなくなってくる。
人生初めての経験だ。
とまどいと、うれしさがごちゃ混ぜになっている。
感情が暴走しそうだ。
「違う」
「なら、何?」
いつも強気な朱美の声が震える。
もしかして今日は、これを言うために待っていたのか?
そう考えた途端、朱美のことが、とても愛しく感じられた。
これは、前からたまに顔を出していた感情。
「きっと、恋愛かな」
「きっと、なんてあいまいな言葉を使うの?」
「自分でも、不思議なんだからしょうがないだろ?」
不満そうにこちらを見つめてくる朱美。
その目はさっきまでの弱々しい目ではなく、強い光を持った目になっている。
俺は、この目が好きなんだ。
「つべこべ言うなって。ほら、帰るぞ?」
「はっきりしないなぁ」
「いいんだよ。これからはっきりさせてくんだから」
幼いあの日の俺は考えただろうか。
まさか、いっしょに泥まみれになって遊んだ朱美と恋人同士になるなんてことを。
きっと、想像できなかっただろう。
俺の隣の席は、昔からただ、1人だけのために・・・。