この世界はモノクロで、色がない。

感情を持たなかった頃の私はそう思っていた。






「ほら、これ持てよ」

「えっ?・・・うわっ」

言うと同時に勝也がボスッとプリントを渡してくる。

「なっ。自分もちゃんと持ちなさいよ。何も持ってないじゃない!!」

「ヤダ」

こんな奴もう知らない。
私はスタスタと勝也を置いて早足で教室まで歩き始めた。
昔の私からは想像もつかないほど、今の私は表情豊かだ。
あの日、勝也に出会うことが出来たから。

「待てよ」

「プリントちゃんと持ってくれるならね」

「イヤだって」

いつの間に追いついたのか、勝也は私のすぐそばに居た。

「っきゃ」

いきなり勝也に抱きつかれて小さな悲鳴を出してしまう。
なにか温かいものがくちびるに触れてきた。

「プリント持ってたら鈴に抱きつくこと出来ないしキスも出来ないだろ?」

触れてきたのは勝也のくちびる。
顔が熱い。

「・・・私もプリント持ってたら勝也に抱きつけないじゃない」

上目遣いで睨んでやると、勝也の顔が赤くなるのが分かった。

「鈴はかわいいなぁ」

チュッと今度は頬にキスをされる。

「大好きだよ」

「俺もだよ」




貴方が私に教えてくれた。
この世界の色を。
だから、今の私の世界は色とりどりでモノクロだったなんて信じられない。
貴方のおかげで、世界はこんなにも美しい。