窓に触れた指先から体温が奪われていく。

「もう、会う事もないでしょう?」

こんな言葉を言っても、きっと彼には届きはしない。


そんな事、誰よりも一番分かってるから。





自分自身が、一番分かってる。


「・・・バイバイ」







この言葉も、きっときっと届きはしない。












頬から涙が零れ落ちた。



・・・泣いてる?



おかしいな、ココ学校なのに。
そう、ココは学校のはず。
なのに、かすかな違和感を感じる。





まるで、他のところに迷い込んでしまったような感じ。





「どうして・・・?」

周りには、誰も居ない。
静かな教室に1人きり。
最後の授業の板書がそのまま残った黒板。
窓から差し込むのは西日。
教室は、赤い。




あ、放課後。





そんな当たり前の事に今更気付くなんて。
本当にどうかしてる。

机の横に掛けてあるカバンを背負う。
ずっしりとくる重みはいつものモノ。
慣れた重さ。


「・・・・・・」


声が、した。



声。



聞きなれた、声。








一番聞きたかった声。











「鈴木」



居るわけない。
アイツがここに、居るわけない。

頭では理解してるのに、理解してるはずなのに。
心は理解なんてしてない。



「・・・・・・・・・」

声が遠くなる。
行ってしまう。









気付いたら、背負ったはずのカバンを投げ出して必死で声を追っていた。










「待って・・・・・・鈴木っ!!!」




遠い背中に届くように、アイツが気付いてくれるように。
必死になって声を出した。



「よっ、松本。そんなに焦ってどうしたんだ?」


「鈴木の姿が見えたから」




続く、たあいもない会話。

その間も拭えない違和感。









この違和感を、無視したい。



















でも・・・そんな事できない。











「鈴木、好きだよ」








悲しい。

寂しいよ・・・。





ねぇ、こんなにも切ないよ。












彼は、笑った。








私は、・・・・・・泣いた。
















涙が、頬を伝って落ちた。






「ほら、ね」

違和感の正体なんて本当は知ってた。



思い通りになる、甘い夢。





久しぶりに見た、彼の顔。


私に話しかける、声。







普段は思い出すことなんて出来ないのに。
夢の中ではあんなに鮮明に。


思い出しすぎて、苦しいよ。







「こんなに、こんなに苦しいのなら・・・」








いっそ夢なんて見ないほうがいい。





冷たい窓に頭を押し付ける。

これが、現実。




「会いたい。・・・会いたいよ」




夢でしか会えないなんて、イヤなんだ・・・。








大好きだよ。








届かない言葉を、こうして夜のたびに贈り続けましょう。
届かないけれども、消えない言葉を。